ホーム 読みもの 創業130年、お仏壇お仏具専門店「おぶつだんの佐倉」 代表インタビュー

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職人の仕事に魅入られて。
「よりどころ」となる
仏壇を届ける

職人の仕事に魅入られて。
「よりどころ」となる
仏壇を届ける

おぶつだんの佐倉 代表取締役

佐倉 浩徳

1884年金箔職人に始まり2014年に創業130年を迎える、株式会社 佐倉幸保商店「おぶつだんの佐倉」の七代目 代表取締役 佐倉 浩徳 です。

職人の仕事に魅入られて。
“よりどころ”となる仏壇を届ける

「暮らしに馴染むお仏壇」をコンセプトに、伝統的な金仏壇や唐木仏壇だけでなく、現代的な生活スタイルや嗜好に合った家具調仏壇やパーソナル仏壇も取り扱う「おぶつだんの佐倉」。2020年にはECサイトをオープンし、全国の顧客の要望に応えています。

「斜陽産業」と言われるようになって久しい仏壇業界。信仰や居住形態の変化にともなって、宗教用具の国内製造出荷額は、ピーク時の1990年の1/3程度にまで減少しています。そんな現状を承知の上で、2007年、家業に入り、7代目として事業を受け継いでいくことを決意した佐倉浩徳さんの思いとは。

逆風の中でも勝機はある

日本の伝統工芸業界全体が抱える問題でもありますが、仏壇業界は今、職人の後継者不足に悩まされていま
す。当社で仕事をお願いしている職人さんにも若い方はいますが、70代、80代の方が多くを占めています。
業界における大きなターニングポイントになったのが、安い人件費を求めた製造拠点の海外移転です。現在、
国内で流通している仏壇のうち、8〜9割が海外で生産されています。

その流れに追い打ちをかけたのが需要の減退です。市場が縮小するとパイの奪い合いになり、価格競争に陥る
のは、どの業界でも同じでしょう。仏壇業界でも、値引き合戦のような状態が続いた時期があります。はじめ
から20万円で売るつもりなのに、40万や50万円、100万円という値段をつけて、その値引き率でお客さんの購
入意欲を刺激する、という手法が蔓延していたのです。

現在もその波はおさまっていませんが、当時、不毛な競争に巻き込まれて買い叩かれた職人さんは相当悔しい
思いをしたのではないでしょうか。幸いなことに、当社が職人さんと良好な関係を維持できているのは、その
波に乗らず、真面目に商売をしていたからだと思います。初代から6代目の父まで、ずっと金箔職人だったこと
もあり、職人の気持ちがわかるというか、単純にいい仕事をする人たちが好きなのです。

もっとも、その原因の一端は、異質な仏壇業界にもあります。長年、仏具店では、商品名をつけず、品質表示
も見せないのが当たり前だったのです。その名残か、われわれの業界に不信感を持ち、「あってないような値
段でしょう」と言うお客様もいらっしゃいます。
そこで私たちは、品質を保証し、価格の透明性を実現するために、2012年より仏壇の原材料や価格をすべてオ
ープンにしています。業界全体の意向ではあるのですが、実践している仏具店は限られているのが現状です。

おかげさまで、お客様から「あんたのところで買ったら間違いなさそうやな」といったお声をいただく機会も
出てきましたし、遠方から来られるお客様も増えています。誠実にやれば結果はついてくると実感しながら
も、気を引き締めねばとこれまで以上に責任を感じているところです。

見えないところも手を抜かない

私は27歳のときに当社に入社しましたが、子どもの頃からずっと、「将来は家業を継ぐ」と決めていたわけではありません。私は大学を卒業後、東京の卸問屋に就職しました。仏具や和雑貨などの日用雑貨を扱っていたのですが、仕事を通していろんな職人と会ううちに、家業のことが頭の片隅を占めるようになったのです。
もしかしたら、佐倉家で代々受け継がれている職人の血が騒いだのかもしれません。仏壇を通して日本の伝統文化を受け継ぐことに魅力を感じた私は、ちょうど結婚を決めたタイミングで「家業を継ごう」と肚を決めたのです。

入社後はまず、金仏壇をつくっている職人さんのもとで半年間修業をさせていただいたのですが、仕事と向き合う職人さんの姿勢や心構えに胸を打たれました。お客様と直接触れ合わなくとも、「お客様の人生にとってどういう意味を持つのか」というところまで思いを馳せながら、心を込めて制作しているように感じられたのです。

特に感銘を受けたのは、見えない部分であっても決して手を抜かないこと。その作業を省いたところで影響が出るのは10年後くらい、仏壇を売るときには何の支障もない。にもかかわらず、当然のように自身の仕事を全うする職人さんの中では、損得勘定がまったく働いていないのでしょう。

それはきっと、「仏壇は何世代にもわたってお祀りする」ことを前提にしているからだと思います。いい仏壇はパーツごとにバラしやすくつくられているのも、後々、修理が少なくて済むように、という考えがあるからです。つくるときは手間がかかるけれども、構造が強固だから、長い目で見ればロスが少ない。そこに職人であり、日本の伝統文化の心が宿っているのかもしれません。

「ありがとう」が溢れる仕事

業界の先行きが厳しいことは事実ですが、未来を憂いていても仕方ありません。私の体感としても、世代や年齢にかかわらず、仏壇を心のよりどころとされている方は一定数いらっしゃいます。そう考えると、暮らし方や生き方が自由になったぶん、義務的に仏壇を買う人が減ったという側面もあるのかもしれません。

この仕事を始めてからつくづく思うようになったのは、こんなにも「ありがとう」の言葉をいただける仕事は素敵だなということ。仏壇をお客様のご自宅に配達し、部屋に設置したときに、「やっと落ち着いたね、お父さん」などと遺影に語りかける方を見たりすると、人を想う心の深さとともに、仏壇の存在意義を感じさせられます。

そういった“故人との心のつながり”を支えているのが、職人の技術です。ただ、当の職人さんたちは自己アピールが苦手というか、そういうことに興味がない。だからこそ、微力ながらも私たちがその価値を伝えて、仕事や技術を絶やさないようにしたいのです。時代が変わっても、その価値を理解してくれる人は、必ずどこかにいると私は信じています。

おぶつだんの佐倉
おぶつだんの佐倉

おぶつだんの佐倉

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