ホーム 読みもの 唐木仏壇一筋100年「仏壇のもがみ」職人インタビュー

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求める人がいる限り、
唐木仏壇をつくり続ける

求める人がいる限り、
唐木仏壇をつくり続ける

株式会社 もがみ 仏壇のもがみ

木下 進

求める人がいる限り、唐木仏壇をつくり続ける

国内では手に入らない黒檀や紫檀などの高級木材を材料とする唐木仏壇。美しい木目や重厚な風合いが特徴で、江戸時代から100年以上の歴史を持つ。
国内有数の唐木仏壇の産地のひとつが徳島県だ。もともと家具や鏡台の生産が盛んだったところに、大阪から製造技術が伝わり、独自の進化を遂げてきた。

そんな徳島県で、「仏壇のもがみ」は1978(昭和53)年に創業。社名に「最上の品質をめざす」という意味をこめ、職人を中心とした10人のメンバーで出発した。
「百年仏壇」をモットーに掲げる「仏壇のもがみ」には、何世代にもわたって仏壇を使い続けてほしいという願いがある。家具調仏壇など、カジュアルで求めやすい仏壇が主流になりつつあるなかで、唐木仏壇一筋を貫くのはなぜか。共同創業者の木下進さん(現会長)に話を聞いた。

唐木仏壇ひとすじ45年

思い返せば、私たちが当社を創業した1980年頃は、徳島にも50社ほど、仏壇をつくっている会社がありました。仏壇はよく売れる商品で、各社で職人さんを取り合うような時代でした。
しかし、家族形態や生活様式の変化とともに、仏壇の需要は落ち込んでいきました。私たちも所属する「徳島県唐木仏壇協同組合連合会」は毎年展示会を開催しているのですが、その参加企業はかつての40社から5社程度まで減少しています。

そのうえ近年は、ロシア・ウクライナ戦争を一因とする木材価格の上昇、ワシントン条約をはじめとした各国の自然保護政策などにより、黒檀や紫檀は手に入りにくくなっています。業界全体が縮小しているなかで、後継者不足の問題も解決しなければなりません。
現在、当社の従業員は20名。40代後半の息子が2代目の社長を務めているので、まわりは多少なりとも安心してくれていると思いますが、若手職人の育成は大きな課題です。

他の伝統工芸分野と同様に、唐木仏壇も存続の危機にさらされていますが、私自身はまだまだやれると思っています。唐木仏壇は、見る人が見れば値打ちをわかっていただけるものだからです。
私は高校卒業後から50年以上この業界に関わっていますが、人が手を合わせる商品は神棚か仏壇をおいて他にありません。私たちが、丸み、やわからみのある仏壇づくりを心がけているのも、使う人にとって心安らぐ存在であってほしいからです。
とはいえ、値が張る、置く場所がないといった理由で唐木仏壇の需要は減っています。それだけにこだわらず「家具調仏壇をつくらないか」と声をかけていただいたことも多々あります。今の時代背景を考えるとそれが経営の正解なのかもしれませんが、私たちはむしろ、唐木仏壇一筋でいくことが生き残る術だと考えてやってきました。

職人の性は変わらない

ものによって違いますが、唐木仏壇の部品数は2000〜3000あり、どれ一つ欠けても完成させられません。それをすべて人の手で削ったり、組み立てたり、塗装したりするので、家具調仏壇とは比べものにならないほど時間も手間もかかります。効率性や合理性が重視される時代において、つくる方もその方向に流れていくのも自然なことだと思います。
だからといって、私たちがその土俵に乗っても意味がありません。いくら時代が変わったとしても、隅々まで丁寧に仕事をする、妥協しないといった職人の性は変わるものではないからです。

私たちは「百年仏壇」とうたっていますが、40〜50年サイクルで洗濯(仏壇の解体、洗浄、修復、再塗装をセットで行うメンテナンス)を続けていればもっと長い期間使えると思います。創業45年の私たちがそれを証明するのはまだまだ先になりますが、半永久的に使えると言っても過言ではないでしょう。

唐木仏壇が特殊なのは、購入してから10年ほど経った頃にお客様から「傷がついたので直してほしい」といったご要望をいただくことだと思います。それほどシビアな基準は、他のモノづくりではまず考えられないのではないでしょうか。

もしかしたら「いいものをつくれば、少々値が張っても評価してくれる人がいる」というかつての感覚が抜けきらないのかもしれません。でも、唐木仏壇を見て美しいと思う心は今でも変わりません。木材そのものの持ち味と職人の技術がかけ合わさることで、いつまでも色褪せない魅力を放つようになるのです。

当社の唐木仏壇を扱ってくれている小売店の方から「『よその店で見比べてみたけど、結局ここに帰ってきた』そう言ってもがみさんの仏壇を買った人がいる」と聞くこともあります。そういう声が届くと、求める人がいる限りやり続けなければ、という気にさせられますね。

おぶつだんの佐倉 

店頭でどの仏壇にしようか悩んでいるお客さんがいた場合、たとえば3つのうち1つがもがみさんの仏壇であれば、他の2つも必ずもがみさんの仏壇です。
つくり手が誰なのか、店頭で表示したり、こちらで説明したりしなくても伝わるものがあるのだと思います。もがみさんのすごいところは、時が経っても反りにくい木になるように、乾燥した木板を独自の乾燥機にかけて水分率を一定にしていること。加えて、表面のしっとり感や滑らかさが際立っているということ。それもこれも、木を知り尽くした職人たちが長く使えるように見えないところまでこだわっているからでしょうね。当店で販売したもがみさんの仏壇に関して、お客様からご不満の声をいただいたことは一度もありません。

株式会社 もがみ
株式会社 もがみ

株式会社 もがみ

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